- 針しごと
棺に入る、その時のために。
- 2024/06/26
様々なオーダーエピソード・・・。
お客様は79歳。嫁入り道具の綺麗なお着物をほどいて、
棺に入る時のための洋服を作らせていただきました。
今日はそんなオーダー事例のご紹介です。
はじめてアトリエを訪ねてくださったYさんは79歳。
持ってきてくださったのは、4年前に地元の河北新報にAttaのことが掲載された新聞記事でした。
「これをずっと持っていてね、いつかお願いしたいと思って保管していたの」
「ちょっと変なことを聞くんだけれど、着物をほどいてワンピースを作っていただきたくって…でもそのワンピースはね、私の『最後の時』に着るものを作ってほしいんですけど、できますか?」
地模様の綺麗なピンク色の着物。
お嫁入の時にお母様が持たせてくれて、一度も袖を通さなかったものを「最後の時」、つまり「棺に入る時」のワンピースとしてお仕立てしてほしいとのことでした。
もちろんできますよ、ただ、それは本当に、その時のためだけのワンピースにしていいのですか?
それとも、普段も着れるようにしておいて・・・そして、その最後の時にも着れるようにされますか?
そう確認したのですが、Yさんの気持ちはきっぱりとしていました。
「もう、最後の時のため、ということでいいんです。きっと母がすごく喜ぶと思うんです。」
Yさんのご希望は、タックの入った襟元で、きちんと感を出してほしいということ。
もう一つは身長が140㎝と小柄なので、自分にあったサイズのお洋服であること。
また、棺に入ったときに足もちゃんと隠れるよな長さにしてほしいということ。
打合せのあと、デザインをまとめ、襟の雰囲気も決めて、お洋服を仮仕上げしました。
写真はタックを寄せて、雰囲気を確認している製作中の写真です。
お着物は、着物のままお預かりをして、Attaにて「ほどき」と「洗い」をして、布にしました。
Yさんご試着の時の後ろ姿。
写真の袖は仮仕上げのときのものなので、少し長いのですが…
このあと再度調整をして、整えていきました。
着丈は棺に入ったときに足が隠れるように…というご希望があるので、このまま一番長く仕上げをさせていただきました。
そうして、仕上がったのがこちらのワンピース。
Yさんご希望の比翼仕立て。
そしてボタンも火葬の際に断られないように燃えることを意識して、共布で手作りしました。
お袖も手がすこし隠れるように、手首にゴムを入れて可愛く仕上げています。
紐は、使うかつかわないかどちらでもいいようにシンプルに作りました。
完成したお洋服を見て・・・
「とっても素敵、ありがとう!母がすごく喜んでくれると思うと、とっても嬉しいわ。お願いしてよかった。」とお客様。
生きることを大切に思うことと等しく、亡くなるその時のことを大切にしたい。
いろいろな終活がありますが、自分の最後のその時を、自分らしくありたいと思う姿に心打たれました。
Yさん、オーダーのご依頼ありがとうございました。
〈参考事例 Yのオーダースケジュール〉
2月上旬 お問合せ
4月 ご来店・アトリエにて打ち合わせ・デザイン確定
6月中旬 ご来店・仮しあげのチェック
6月下旬 ご来店完成品のお渡し
※現在オーダー受付は、常時立て込んでいる為、お問合せいただいてから約3か月~半年後に打ち合わせをさせていただき、お会いした時に仮仕上げと完成時期の目安をお伝えしています。